K-1
念願のKマウントデジタルフルサイズ
- ハイグレード
- フルサイズ
- ダブルダイヤル
- 五段五軸手ブレ補正
- GPS
- アストロトレーサー
- リアルレゾリューション
- フレキシブルチルト
- クロップモード
- アウトドアモニター
- スマートファンクション
- デュアルスロット
- -10度耐寒
- 防塵防滴
- センサーCMOS
- センサーサイズフルサイズ
- 有効画素数3640万画素
- ISO感度100-204800
- 連射速度4.4枚/秒
- 高さ110mm
- 最大径136.5mm
- 奥行き85.5mm
- 重量1010g
ペンタックスが満を持して世に送り出したフルサイズ一眼レフ。
凝縮感のあるボディに様々なギミックを積み、高画素機でありながら気軽に扱うことができる。
- フルサイズセンサーならではの豊かな画質と高い高感度耐性
- 5軸5段の強力な手ブレ補正
- 3600万画素という高画素。APS-Cクロップしても1500万画素と実用的
- 防塵防滴、-10度までの耐寒性能
- フルサイズ一眼レフとしてはコンパクトなサイズ
- 動体AFはそんなに得意ではない
- 内蔵フラッシュ非搭載
- 高画素機ゆえのファイルサイズの大きさ
実際に使用してのレビュー
画質
基本的な画質はどうか
3640万画素のフルサイズセンサーにローパスレス。これで画質が悪いはずがない。
解像感、階調性、質感描写、立体感、どれを取ってもAPS-Cより一段格上の写り。カメラの画質を語る上でセンサーサイズの大きさは単純かつ強力な要素だと改めて思わされる。
発売から3年経った2019年時点でも他社の最新機種と比べて遜色はない。
高感度はどこまでいけるか
センサーサイズの強みを活かした高感度耐性。
高感度ノイズをどこまで許容するかは人それぞれだが、個人的にはISO12800までは余裕で使える常用感度。ノイズリダクションがディテールを損なうだけの不要なものに思えるほどにノイズが気にならない。
場合によってはISO25600もまだきれいに写るので準常用。ISO51200になるとシャドー部の多いシーンではカラーノイズがやや目立ってくるが、そうしたものが気にならない明るいシーンなどでは使って行けるかもしれない。
それ以上の感度ではさすがにかなりノイズが目立つが、それでも思いの外に荒れた画質にはならないので、非常用、記録用としては十分使えるという印象。
ただ暗部ノイズはISO3200程度でも気になることがあるため、夕方や夜、屋内のような光が十分でない状況ではなるべく感度を下げるに越したことはないと思っている。
リアルレゾリューションの効き目はいかほどか
高画素とリアルレゾリューションシステムを掛け合わせることで一段高い精細な描写を実現している。
三脚必須で静物相手限定という但し書きは付くものの、これは素晴らしい機能。
リアレゾに関する詳細は後述。
肌色補正
ほか個人的には使う機会は少ないが、少し試してみてかなり良いと思ったのが肌色補正。
肌がきれいに写るので被写体の受けが良い。全国の妻帯者各位におかれましては大蔵省を口説き落とす説得材料になるのではないでしょうか。
基本的な使い勝手
手ブレ補正
フルサイズ機では困難とされていた手ブレ補正がしっかり搭載されていて、従来のペンタックスのカメラと同様に全てのレンズで手ブレ補正が有効。
しかもより強化された5軸手ブレ補正で5段分の効果となっている。
人によっては標準レンズ手持ちで1秒以上のスローシャッターが切れる模様。自分は素のスタビライズ能力が低いので1秒となると10枚に1枚くらいの歩留まりになってしまうが、がんばれば撮れないことはない。
300mmでは1/20秒で7割、1/10秒で2割くらいがブレずに撮れる。
AF性能
K-3IIより強化されていて、もともと強みであった暗所AFも更に強化され素早くなっている。
総じてボディモーターを使うレンズのAFはかなり速い。SDMやDCモーターはレンズ側の性能による。
ライブビュー時も素早い。ただ近接撮影する際の迷いは致し方ないか。
動体AFは改善されたとは言え他社に大きく水をあけられている状況は変わっていない。
操作性
カメラの細かな操作性に関しては上級機らしく豊富なハードウェアボタンを備える点がまず良い。
またメニューも良く整理されていて、たまにしか使わない機能もほぼ迷わずに見つけられるのはペンタックス機の良いところではなかろうか。単に慣れの問題かもだが。
新しく追加されたスマートファンクションをはじめとしてボタンカスタマイズの自由度も充実。
更にinfoボタンを押したときに表示されるコントロールパネルのカスタマイズも可能となっている。これにより自分なりに好みの操作性をかなり煮詰めることができたりする。
自分は使わない項目として「ディストーション補正」「周辺光量補正」「JEPG記録サイズ」があったので、「ISO AUTO MIN」「Wi-Fi」「焦点距離入力」としたりしている。
ファインダー
ファインダーを通して見える広さはフルサイズ機ならでは。
ただ透過型液晶を入れた影響か、まれに色収差のようなにじみが見えるのが気になるかな?
ピントの山の見やすさなどはK-3IIとさほど変わっておらず、期待したよりMFのしやすさは向上していない。
バッテリーの持ち
1日数百枚程度の撮影なら従来通り数日は充電不要で、バッテリーの持ちは十分と言える。
ただしGPSロガーをオンにしている場合やライブビューを多用する場合は一日でバッテリーを使い切ってしまうこともあるので、そうした使い方をするならば予備バッテリーは必ず持っておきたい。
K-5系、K-3II系と同じバッテリーなので予備バッテリーを流用できるのはうれしい。
クロップモード
APS-C用レンズを使えるようにするために搭載されたクロップモード。
フルサイズ用レンズのラインナップが少ない現状では必須の機能と言えるが、フルサイズのレンズを使っているときにも望遠寄りに画角チェンジできて便利だったりする。
APS-Cクロップでも約1500万画素相当のカメラとして使うことができるので十分な画質を維持できる。
内蔵フラッシュ非搭載
内蔵フラッシュ非搭載は評価が分かれるところだろうか。
個人的にはフラッシュの使用頻度は低いのでそれほど気にならないが、やはりたまに使いたいときがある。コンパクトなAF201FGを常にお供に持ち歩くのがいいだろうか。
外部ストロボを利用したワイヤレス撮影の際にも本体のみではコントロール発光ができない。
各種ギミックの評価
フレキシブルチルト液晶
新機能として最も目を引くフレキシブルチルト液晶。これでローアングル、ハイアングルが横位置縦位置どちらでもやりやすくなった。手持ちはもちろん三脚に据えたときの体勢が楽になる。変態液晶などと呼ばれているが実用性に関しては真面目に良い。
バリアングル液晶との差を言えば、液晶の表示と光軸が大きく離れないので被写体をフレーム内にとらえやすく、液晶を横に開いたり回したりといった操作がないので、より素早く直感的に操作できる点が優れている。
複雑な機構なので耐久面が心配になるが、とりあえず3年間使ったところでは問題ない。
アウトドアモニター
液晶を明るくしたり暗くしたりできる機能。
また変な機能付けて・・・と思いきやとっても実用的。
晴天の日光が液晶に当たった状態でもはっきりと画面を確認できるので、液晶を見る際に「日に背を向けて自分の影で日光を遮って」といういささか大きなアクションが不要になった。
これは全てのミラーレス機に必要な機能に思える。ただ露出が変わって見えるのでそのあたりは注意。
ちなみに設定ボタンがボディ背面の十字ボタンの一角を占めると言うレギュラー扱いの機能だが、このボタンはfx2ボタンとしてカスタマイズ可能になっている。アウトドアモニターを使わないという場合はボタンカスタマイズで他の機能を割り当てることができる。こういうかゆいところに手が届く感じは非常に良い。
アシストライト
また変な機能付けて・・・と思いきやとっても実用的(二度目)
夜間撮影でレンズ交換する際にマウント部を照らしてくれるのは非常に助かる。これは実際不便を感じるケースが多かったところだ。
フレキシブルチルトを手前に引き出せばボタン類も照らすことが可能。
まあ最初から夜間撮影するのが分かっているならLEDヘッドライトを持っていくのが正解なんだけど、ふと撮影したくなったり、そもそも忘れてしまう場合もあるので。
スマートファンクション
要るのかなこれ?と思っていた機能だが、PモードやTAvモードの時は露出補正を、マニュアル撮影の時はISOを割り当てるとけっこう便利だ。
普段はAvモードを使うケースが多いので、その際にはクロップを割り当てている。
スマートファンクションのダイヤルのせいで肩液晶が小さくなったのは、人によってはマイナスかもしれない。が、個人的には肩液晶ほとんど使わないのでそこは割とどうでもいい。
内蔵GPSとアストロトレーサー
K-3IIに引き続きフィールドカメラとしてGPS内蔵。
不要という人もいるだろうが、旅をする人間としてはやはりうれしい機能。
GPSロガーをONにしておけば起動の度にGPS測位で待たされることがないため非常に実用的。カメラ内蔵のGPS機能としては申し分ない。
アストロトレーサーの機能も使えるので、自分のように普段星を写さない人間でもちょっとのついでに星撮りにチャレンジできるのは良い。
注意点としてはGPS情報が写真に埋め込まれることでプライバシーに気を遣う必要があること。
自宅や知人宅、勤務地等のプライベートな位置情報が乗った写真を不意にネットに公開したりしてしまわないように。
カスタムイメージ オートセレクト
カスタムイメージのオートセレクトは、撮影画像を解析して最適と判断するカスタムイメージを適用してくれるというもの。
自分でイメージを固めてからシャッターボタンを押す向きには不要な機能だが、気軽なスナップに使う分にはカスタムイメージを固定にしておくよりも色々なパターンの写真を撮ることができていいかもしれない。
個人的には必要としないが、今後エントリー機に入ると面白い機能ではないだろうか。
携帯性
フルサイズの一眼レフとしては間違いなく最小クラスのボディサイズ。
バッテリーとSDカードを入れた状態で約1kgと多少重くはなっているが、重さよりサイズの方が収納性に関わってくるので、サイズがAPS-Cの一眼レフより一回り大きい程度に収まっているのは非常に助かる。
総評
ねんがんの ケーワン をてにいれたぞ!
何というか発売時は最高としか言いようがなかったが、2年使った今でも最高としか言いようがない。
他社にない独特の機能が多くありながら、それがしっかりと使いやすくまとまっているところに完成度の高さを感じる。
フルサイズ機ならではの画質性能でも後発の利を活かして他社上級機をわずかに凌ぐものになっており、これをかなりリーズナブルな価格で出してきたところは評価に値する。
このK-1には様々な機能が盛り込まれているが、手ブレ補正やAF性能といったカメラの基本の使い勝手に関わる点が確実に向上している点がまず非常に評価できる。
フルサイズ機ならではの広くて見やすいファインダー、静粛性の高く上品なシャッター音など感覚的な気持ちよさを備えている点にも使っていて喜びを感じる。
レンズラインナップの拡充がなかなか進まないなど悩ましい点はあるものの、素晴らしいフルサイズボディが出てくれたことは感謝に堪えない。
満足度は120点。
このカメラに関するメモ
非常に満足しているところ
これは何と言ってもFAリミテッドが本来の画角&より優れた画質で使えること。
ペンタックスのKマウントフルサイズが実現する世界線にいられたことに深く感謝したい。
続いてボディサイズが小さく抑えられていること。
他社フルサイズもだいぶサイズを抑えた一眼レフが出ているので、K-1がサイズを売りにするのも厳しいかと思っていたが、出てみれば他社よりも更に小さなボディで出してきたところに安心と満足。
そして凝縮感のあるマッシブなボディ。なんだか触っているだけでうれしさがある。
動作の安定性も増しており、フリーズなどの異常動作がほぼない点も評価に値する。
残念だったところ
まずはファインダー倍率。
ペンタ部の大きさから勝手に大きな期待を持っていたので発売発表でスペックが公開されたときには少々落胆した。K-1が手元に届く頃にはすっかり忘れていたけど。
それからAPS-Cクロップ時にファインダーのクロップ範囲外がグレーアウトしないこと。
K-1完全ガイドのインタビューによると透過液晶にムラが見えてしまうのでやめたとのことだったが、APS-Cレンズもしばらく現役で使わなくてはならないことを考えると、ここは是非対応して欲しかった。
リアル・レゾリューション・システムについて
K-3IIにも搭載されていたセンサーシフトを利用した超解像技術。
センサーを精密に規則正しくシフトしながら4枚撮影し、1ピクセルごとにRGB情報を得ることで擬似的にFOVEONのような多層センサーをシミュレートする。さすがペンタックス変態過ぎます。
そして他社も追随して同じような機能を入れてきているのでみんな変態になりつつある。
けれん味に満ちた技術のようで実際の効果は確かなもので、3600万画素の高画素と組み合わさることで無双の解像感が得られる。
解像力の向上に加えて階調性や色再現の向上、モアレの抑止、ノイズ低減にも効果があり、画質におけるメリットは大きい。
ただし全く同じ像を4枚撮影しなくてはならないため、カメラも被写体も動かない撮影が求められる。
つまり三脚必須で静物相手にのみ有効という制約がある。
有り体に言うと条件がそろったときにのみ発動できる必殺技のようなものだ。
とは言えフレーム内に動く物がある場合には動体補正が働くので、少しでも動くものがあると使えないというわけではない。
動体補正では動いたものがある場所だけリアルレゾリューションがキャンセルされて通常撮影したのと同じ解像の仕方で写る。
この動体補正のオンオフができるようになったのはK-3IIと違う点。
K-3IIにも動体補正自体は入っているフシがあるので、単純に誤動作防止目的でオンオフできるようになったというのが変更点だろうか。もしかして効果も強まっているのかもしれないが、激しく動く被写体に関してはやはり不自然なドット模様が現れることがある。
明確なデメリットはRAWの画像サイズが大きくなること。
JPEGの画像サイズは通常撮影のものとほぼ変わらないが、RAWは画像4枚分のサイズとなり、もともとが高画素のK-1では150MBから200MBにも及ぶ。
これだけのサイズのファイルだと読み書きが90MB/sのSDカードでも撮影後に書き込みで少し待たされる。
その書き込みの前に画像合成処理にかかる時間もあるので、テンポ良くパシャパシャと撮っていくことはできず、自然と一枚一枚じっくりと撮っていくような撮影になる。
なおRAWで撮っておくとボディ内現像では超解像のONとOFFを切り替えてどちらの画像でも取り出せる。
このRAWはLightroomでも現像でき超解像の効果もしっかりと得られるが、Lightroomでは超解像OFFの画像は取り出せない点に注意。ついでにボディ内現像以外では動体補正も効きが悪いか、もしくは効かないようだ。
ところでこのリアレゾの効果を契機に未来に思いをはせると、多層センサーが一般化すると今までの全てのカメラは過去のものになってしまうのかなー。
K-1改(MarkII相当)へのアップグレード
K-1 MarkIIの発表にともないK-1のアップグレードサービスの実施も告知された。
期間は2018年の5月21日から9月30日まで。費用は税込み54,000円。
メイン基板の交換でK-1 MarkII相当のK-1改となる。
それによって起こる変更は以下の通り。
- アクセラレータユニット搭載で高感度性能アップ
- 手持ちレアレゾが可能に
- AF性能向上
- バッテリー寿命減(撮影可能枚数が760枚から670枚へ)
- マウント正面左下のSRバッジが「II」に変更
- K-1で今まで撮ったRAWがボディ内現像できなくなる
基本的には性能アップだが、デメリットもあるのでご利用は計画的に。
参考: 「PENTAX K-1」アップグレードサービス実施のお知らせ
関連用品
バッテリーグリップ D-BG6
グリップを向上させるかなりオススメのアクセサリー。
縦位置撮影の際にも安定した姿勢で構えることができ、手ぶれ防止にも効果有り。(効果には個人差があります)
バッテリー D-LI90P
旅に出る時などは念のため予備バッテリーが欲しいところ。
GPSロガーを使うならばなおさら。
ストロボ
リニューアルされて防塵防滴になったAF540FGZ IIおよびAF360FGZ II、AF201FGが用意されている。
本格的にストロボを使うなら光量が大きく首振りバウンスなどもできるAF540FGZ IIおよびAF360FGZ IIが便利。
内蔵フラッシュがなくなったのでポケットサイズのAF201FGを携行するのもおすすめ。ハイスピードシンクロやスレーブ発光など本格的な機能は使えないが、カメラ内蔵フラッシュの代替として考えれば光量は多く天井バウンスも可能であるなど十分以上。
AF540FGZ II
AF360FGZ II
AF201FG
防水リモコン O-RC1
三脚立てての風景撮影などに。
洗濯しても平気なくらいの防水性能。
赤外線式なのでしっかり受光部に向けないと反応しない点が若干だが不便。
個人的には赤外線式リモコンを使うくらいなら2秒タイマーでいいんじゃないかとも思い始めている。
ケーブルスイッチ CS-205
花火撮影などに。
リモコンの方が気軽に使えるが角度などによって反応しないことがあるので、シャッターチャンス確実に捉えたい場合にはケーブルの方が確実。
イメージセンサークリーニングキット O-ICK1
野外でレンズ交換しているとどうしてもセンサーにゴミが付着するが、これがあればメーカーに持ち込まなくてもセンサー清掃できるようになる。
青空などにゴミが映り込むようになったらこれで清掃すればOK。効果覿面。
通称ぺったん棒。
他のメーカーのカメラにも使える(自己責任)
K-1 完全ガイド
分かりやすいマニュアルとして、新機能の解説本として、テクニックのHowTo本として、写真を楽しむ読み物として、フルサイズで使えるレンズのカタログとして、色々と楽しめる充実のガイドブック。