smc PENTAX-DA★16-50mm F2.8ED AL [IF]SDM
実写良ければすべて良し
- スターレンズ
- ハイグレード
- 標準レンズ
- ズームレンズ
- AF
- SDM
- 防塵防滴
- クイックシフトフォーカス
- インナーフォーカス
- SPコーティング
- 焦点距離16-50mm
- 最小絞りF2.8
- 最大絞りF22
- 絞り羽根枚数9枚
- レンズ構成12群15枚
- 最短撮影距離0.3mm
- 最大撮影倍率0.21倍
- 最大径84mm
- 全長98.5mm
- 重量565g
- フィルター径77mm
KマウントのAPS-C用の標準ズームとしては最も優れた表現力を持つF2.8通しのスターレンズ。
癖のある描写性能をしているためそれなりの使いこなしを求められるものの、それでも使う価値のあると感じさせる一本。
加えてアウトドアにおける防塵防滴の安心感などにはかなり満足している。
しかしSDMの故障などトラブルが多すぎるのが玉に瑕。
- 質感や立体感により被写体の存在感が際立つ表現力
- F2.8通しで換算約24〜75mm標準域をカバーする使い勝手の良さ
- アウトドアで心強い防塵防滴
- SDMが故障しやすい
- 癖の強いボケ
- 周辺部の解像がやや甘く色収差も出やすいなど、スターレンズとしてはやや物足りない光学性能
実際に使用してのレビュー
描写の傾向
スターレンズらしい豊かな描写力
豊かな色調や質感、被写体が浮き上がってくるような立体感の描写には傑出したものがある。
後述するようにいくらか欠点はあるが、多くのシーンでそれをカバーして余りある実力を発揮してくれる。
シャープネス、解像力
開放では甘いとよく言われるがピントの合ったところは十分にシャープ。もちろん絞ればより解像力は増し、F5.6〜F8程度まで絞るとぐっと安定する。F11まで絞ると小絞りボケが出てくるが周辺はそれ以上に絞った方がしっかり写る。
ただ絞っても中央に比べると周辺部は甘くなりがちで、シビアに見ると隅々までの安定を求めるような描写には向いていない。
しかし質感や立体感の表現力は遠景でも変わらず素晴らしく、隅っことかどうでもいいやと思えてしまう。いや、やっぱりたまに残念なときもあるけど。
おおむね良好だが時に癖の強いボケ味
基本的にはおおむねやわらかくきれいにぼけてくれるので、大口径レンズならではのボケが楽しめる。
ただ玉ボケの輪郭が濃く出ることがあるという癖があり、特に開放で出やすい。これが出るとかなり目障り。
逆光耐性はまずまず
太陽などがフレームに入るとゴーストは普通に出るがフレアが気になったことはない。
通常撮影ではほぼ問題ないレベルと思うが、夜景では街灯などの強い光源によるゴーストが気になるケースあり。
広角端での歪曲がやや大きい
広角端での歪曲は樽型で直線的な被写体ではかなりゆがみが目立つ。
自然の風景を写す分にはそれほど気にならないが、建物の写真などでは補正も視野に入れた方がいいだろう。
色収差
周辺部の色収差は絞ってもなお目立つことがある。
周辺部の解像の甘さと相まって四隅まで完璧な画質を求める向きには合わない。
光学性能に分かりやすい粗があるのはスターレンズとして見るとちょっと残念ではある。
使い勝手
防塵防滴
防塵防滴の標準ズームとしては今のところオンリーワンの存在。
天候耐性と高い描写力を両立しているので、旅やアウトドアのさなかでもズームの便利さを享受しつつ画質の妥協もしたくないと言う向きには最適。
自分の使用経験の中では富士登山でずぶ濡れになっても問題なく動き続けるなど、その信頼度は高い。
便利な16mmスタート
APS-Cの16mmは超広角の入り口である換算24mm。これをレンズ交換なしに使えるのはやはり便利。
キットレンズの18mm始まりとは明らかに違う広さと遠近感があり、初心者の頃に初めてファインダーをのぞいたときには「おおっ」と声が出てしまったほど。
望遠端の50mmも中望遠として十分な長さで、フットワークも駆使すればだいたいこれ一本で色々撮りきれる。
扱いやすいF2.8通し
ズームで焦点距離を変えてもF値が変わらないのはやはり便利。
AFは速度精度ともに十分
AFは十分に速くストレスを感じたことはそれほどない。精度も上々。ただしSDMモーターを修理交換するまでは精度がイマイチと感じることがしばしばあった。
画質に関するネガティブな意見の何割かは実はAF精度のせいなのでは?などと思っているのだがさて。
ちなみに片ボケ調整に出してなぜか後ピンになって戻ってきた時の遠景画質といったら高倍率ズーム以下のひどいものだった。
マクロとまではいかないが寄って大きく写せる
最短撮影距離は30cmだがレンズ自体が長いためワーキングディスタンスが短く、思った以上に寄ることができる。
最大撮影倍率も0.21倍とまずまず高く、広角で遠近のメリハリを付けたり望遠で被写体をクローズアップしたりするのにストレスを感じない。
携帯性
大口径の標準ズームとしては順当な携帯性
キットレンズの標準ズームに比べると大柄ではあるが、長さは10cm以下に抑えられており中型レンズといったところ。F2.8通しの標準ズームとしては妥当。
写りの良さを求めて単焦点レンズを複数持ち歩くことと比較すれば携帯性は良いとも言える。
総評
満足度は90点
癖のあるレンズだが、使い込むにつれ評価が高まった一本。
このレンズは人によって評価が分かれるレンズで、諸所のレンズレビューによる光学性能のレポートもイマイチふるわないことが多い。自分も使い始めた当初は世評に聞くとおりの不満点や欠点が気になっていてこのレンズに対する評価はそれほどではなかった。
しかし実際に使うと満足のいく写真が取れることが多いのだから問題なかろう、ということに最終的にはなっていて、特に質感や立体感の表現力はなかなか他にはないものだと思っている。
なので非常に良いと思うのだけど如何せんSDMが壊れすぎ問題。そこで大幅減点。
今でもこのレンズで撮った写真を見ると描写は素晴らしいと思う。
SDMの問題さえ無ければ・・・
購入に関するアドバイス
入手性について
現行品なので普通に新品購入が可能。発売から10年以上が経ち新品でも手頃な価格になっている。
中古はSDMが故障しやすい古いロットのものを掴む可能性があるので個人的にあまりオススメはしない。
類似または関連するレンズとの比較
HD PENTAX-DA 16-85mm F3.5-5.6 ED DC WR
同じ16mmスタートで85mmまで望遠が伸びてズームレンジが広いほか最大撮影倍率が0.26倍と高く使い勝手が良い。
隅々までクッキリハッキリ堅実に写るので癖もなく扱いやすく、風景写真や旅の記録などにはHD DA16-85の方がいいかも。
一方で質感描写など細かい写りはDA★16-50の方が上で、F2.8通しのため絞りのコントロールの幅も広い。
なんだかんだでさすがはスターレンズといったところ。
サードパーティのF2.8通し
防塵防滴が必要なければサードパーティのF2.8通しを検討するのも賢い選択。
タムロンのA16などはボケ味やコストパフォーマンスも含めてなかなか評価が高いようだ。
シグマの17-50は開放からキレがよいと言われるが、ボケはやや固い。
こういう人にはおすすめ
- APS-Cで防塵防滴の標準ズームが欲しい人
- 高い表現力を標準ズームに求めたい人
- 旅や登山などアウトドアで写真を撮る人
- トラブルを楽しめる人(重要)
こういう人は買わない方が良い
- 開放からシャープでキレのよいレンズが欲しい人 => シグマが良い
- コストパフォーマンスを重視する人 => タムロンが良い
- 四隅の描写にこだわる人
- 色収差など光学性能の粗が絶対に許せない人
自分が購入した動機
そもそも自分がこのレンズを購入するときに想定したシーンは実は富士登山。
富士山には何回か登っているが、頂上付近になってくると晴れていても凄まじい強風が吹き荒れていることが多く、砂利がショットガンの弾のような勢いで飛んでくるというなかなかタフなフィールドなのである。まさに防塵防滴が必要な場面ではないだろうか。
加えてそんな中でレンズ交換する度胸はないので、レンズ交換なしに、でもせっかく登った富士山なのでできるだけ良い画質で、と思うと今のところこれしか選択肢がなかったと言う。
とにかく悪天候だとレンズ交換したくなくなるので富士登山ほどの過酷な状況でなくてもこのズームの存在は助かる。実際に雨や雪の中では「表現力の高い防塵防滴ズーム」というキャラクターがとても役に立った経験あり。
このレンズに関するメモ
片ボケの問題
ユーザーからの片ボケ報告が多いレンズでもある。
片ボケが判明したら調整に出すより購入店で初期不良交換してもらうのが手っ取り早い。
そういう意味では中古より新品で買いたいレンズだ。
トキナー版
トキナーとの共同開発レンズなのでキヤノン用とニコン用がトキナーから出ている(ただし防塵防滴、SDMのほかコーティングなども違うはずなので完全に同じ物ではない)が、そちらは実勢価格が5万円〜6万円台となっている。
これくらいの価格であればまた評価の傾向も違ったものになっていたかもしれない。
と、いろいろと思索のネタになるので面白いレンズだなあと思う。
フルサイズ機での利用
ズーム位置、フォーカス距離を問わずに全域でケラレる。
かなり大きく影がかかるのでファインダーを覗いた時点で利用が無理と分かるレベル。
大人しくAPS-Cクロップで使うべし。
メンテ&使用記録
このレンズだけこの項がすごく長い。
SDMモーター交換 2012/03
LVでコントラストAFが効かないので新宿のペンタックスフォーラムに持って行ったらめでたく工場送りに。約一週間で帰ってきた。料金は保証期間内ということで無料。
コントラストAFだけでなく位相差AFも遅くなっていたとのことで、確かに戻ってきてAFも速くなった。AFが遅いと感じている人は点検に出してみると幸せになれるかもしれない。
DA★16-50のSDM故障に関してはエンジニアのコメントもある通り、よくあることだったらしい。この修理で対策品になってるといいんだけどな。
そういう事情もありこのレンズに関しては中古は危険かもしれない。
位相差AFで遠景に対する無限遠がきちんと合わない 2012/04
遠景が微妙にもやっとしているなと思ったらそんなかんじだった。
コントラストAFだとしっかりと合う。三脚立ててテスト撮影してみても同様の結果。
しかし上京したついでに新宿のペンタックスフォーラムで見てもらったが異常なしと言うことだった。検査と実写のギャップにはまってしまったか。
というわけで遠景はこれからずっとコントラストAFで撮るということに。ハズレ固体掴んでしまったのかな。
気がついたこと 2012/06
上記のAFの件はミラーショックだったっぽい。
というわけで現在異常なしです。
気がついたこと 2012/11
以前気になっていたAF精度もいつの間にか何も問題なくなっている。
3月にSDMモーター交換してからかな。
片ボケ調整 2013/01
右上の片ボケを調整した。
妙に画質が荒れているなと思う時がたまにあったのだが、気がついて過去の写真を見返してみれば片ボケしていたと言う。
気になる頻度は少なかったが、右上にメインの被写体を持ってきたときや文字があるときなどは明らかに残念な感じだったので調整してもらった。
片ボケはSDMの故障と同様にこのレンズに良くある症状らしいので、一通り通過儀礼を果たしたと言ったところかな。
多分これで万全。
・・・ではなかった。右側は直ったけど今度は広角端の左側がひどいよ。気になる頻度がかなり多くなった。これじゃ前の方が良かったくらいだ。
再度片ボケ調整 2013/02
再び片ボケの調整に出したらすさまじい後ピンになって返ってきた。しかも片ボケは直っていなかった。
まいりましたねえ。
ハズレ玉と諦めて二本目を買うか検討中。
後ピン&片ボケ調整 2013/03
素晴らしく調整されてきた。
パーフェクトだ、ペンタックス!
AFの挙動が怪しい 2013/09
なんか使い始めにAFが反応しないことがある。
すぐ動くようになるが不吉な予感。
SDM逝く 2013/11
寒い朝、SDMが逝った。
悲しい。
MFはできる。
画質的にはかなり良く調整された個体になっているので放り投げる気はないけど、フルサイズの足音も聞こえてきている今どうしようかなって言う。
ん?その足音は幻聴じゃないかって?
SDM修理 2014/01
やっぱりこいつが必要だったので修理。
二度目のSDM故障だったせいか無償修理だった。ありがてえ。
SDM君・・・ 2014/11
またAFの動きが渋くなってきた(ノ∀`)
毎年のように修理が必要ってどういうことなの・・・
SDMモーター交換 2015/04
結局逝ったので修理。ずいぶん前に逝ってたけどしばらく放置してた。
DA★300のSDMが逝ったのを機会についでにまとめて修理に。
修理代金はファミリークラブのプレミアムメンバー割引適用で13,910円也(税込)
次SDMが壊れたらさすがにぶんなげる。
SDM死亡 2016/11
うん、「また」なんだ。済まない。
少し前まで快調そのものだったのにな・・・
もー、ほんとに仕方のねえやつだ。
さすがにもう直す予定はない。R.I.P DA★16-50。
SDMやや復活 2016/12
若干復活。
カメラの電源を入れてすぐは動かないが、しばらくすると動くようになる、という以前DA★60-250であったのと同じ状態。
いつ完全死亡するか分からないので遠出する時は不安で使えないが、近所の散歩程度なら使えるかなー。
売却 2018/12
SDM完全死亡を確認。MFのみで使うかちょっと迷ったが結局は使わなそうなので不良個体として二束三文でドナドナとなった。
関連用品
フィルター
77mm径となるとけっこう値段も張るが、風景撮影に用いる機会が多い人ならPLフィルターやNDフィルターは準備しておきたいところ。広角端でケラレないためにフレームが薄型のものを選ぶ必要がある。
77mmはDA14やDA12-24などの広角レンズからDA★200やDA★300などの超望遠レンズまで共用できるレンズが多いので使い回しが効くのが良い。
ステップダウンリング
77mm-67mmで67mm径のフィルター使えないかなと思って試したが残念ながら広角端でケラレ。
超広角をカバーするレンズでステップダウンリングは無理がある。
現像ソフト
今時の現像ソフトは色収差除去とかすごい。具体的に言うとLightroomの色収差除去がすごい。
DA★16-50は色収差が多めのレンズなのでそうした現像ソフトの存在はけっこうありがたい。
混み入ったパープルフリンジなどには歯が立たないこともあるが、チェックボックスをポチッとするだけでかなり効くのでおすすめ。単純なパターンなら大きく出ていてもスパッと消える。