Sigma 18-35mm F1.8 DC HSM Art
数本の単焦点を悪魔合体させたかのような規格外のショートズーム
- APS-C用
- ハイグレード
- 標準レンズ
- ズームレンズ
- AF
- HSM
- フルタイムマニュアル
- 円形絞り
- 焦点距離18-35mm
- 最小絞りF1.8
- 最大絞りF16
- 絞り羽根枚数9枚
- レンズ構成12群17枚
- 最短撮影距離0.28mm
- 最大撮影倍率0.232倍
- 最大径78mm
- 全長121mm
- 重量810g
- フィルター径72mm
規格外のスペックに興味が抑えられず手にした一本。
F1.8通しに加え開放からのキレが素晴らしく楽しいレンズ。
- 他に類を見ないF1.8通しのズームレンズ
- 開放からシャープでキレのある描写
- USB DOCKによるピント調整やファームアップが可能
- F値と引き換えにズームレンジが短い
- 携帯性が良いとは言えない
- AFのバラツキ
実際に使用してのレビュー
描写の傾向
開放から非常にキレのあるレンズで、絞りすぎると逆にキレが落ちていく。
一般的なレンズは開放で柔らかく、絞るとシャープに、と言うのが普通だが、このレンズの場合は開放でシャープに、絞ると柔らかく、といった頭で使った方がいいかもしれない。
では絞るとダメなのかと言うとそうでもなく、きめの細かさを感じさせる自然な写りとなり、それはそれで良い。
またその絞った状態でも他のズームレンズよりよっぽど解像力が高いくらいなので、絞ることに臆病になる必要もない。
具体的にはだいたいF2.8〜F4あたりが周辺まで含めてピークの解像力で、望遠端付近のみF5.6くらいまで絞った方が隅までしっかりする。
どのズームレンジでも一段絞れば遠景も十分しっかり写るので、被写界深度が足りていればF2.8やF4で撮った方がよく解像してシャープに写る。
開放の周辺減光はかなり大きめで目立つが、持ち前の切れ味と相まってなかなか味わい深い印象的な写りになる。
ボケ味はまずまず。こちらは解像力と違ってさすがに単焦点には及ばず、特に後ボケに満足できないことがあるが、おかしな癖もなく十分に美しいと言っていいものだ。
逆光耐性は良好でほとんどのケースで問題はない。
強い光源がフレームに入るような場合ではゴーストが出るが、フレアは良く抑えられている。
ゴーストは絞ったときによりはっきりと出るようで、絞りを開けることで目立たなくなることもある。
歪曲や色収差も標準的なレベル以下に抑えられており特に気にはならない。
使い勝手
ズームレンジは短いが広角〜標準のよく使う画角をカバーしており意外と使いやすい。三脚立てて使うにも単焦点より圧倒的に便利。
最短撮影距離28cmとかなり寄ることができ、最大撮影倍率も高いので、被写体をクローズアップするにも不満なく、汎用性も高い。
開放からキレのあるレンズで、かつボディ内手ブレ補正があるので室内や曇天、黄昏時などでも使いやすい。手ブレ補正付きでこのレンズが使えるというのは素晴らしい。
一方であまり絞らない方が解像力が高いので、ベストのシャープさでパンフォーカスを狙うのがちょっと難しいと感じる場面もある。
とは言え絞っても見事な解像力なので、ピント優先で絞りを選んで全く問題はないのだが。
AF速度は十分に高速かつHSMなので静かで快適。
ただし動作の精度にバラツキがある。単なる前ピン後ピンではなく、同じ物に対してフォーカスした時に合ったり合わなかったり。明るいレンズなので多少バラツキが出るのは仕方ないのかもしれないが、明らかに他のレンズよりもそれが目立つ。
そのせいで使い物にならないというほどひどくはないが、気になる人は気になるレベル。ベストショットゲットだぜ!と思って画像を確認したらピンズレでした、というのは切ない。
とりあえず、ここぞと言うときには完全にAF任せにはせずピントをしっかりと確認した方が良さそうだ。
フルタイムマニュアルが可能なのでAF後のピントの調整は容易。
ピントの山は見やすく、ピントリングも適度なトルクで操作しやすいため、MF操作もやりやすい。
携帯性
APS-C用の標準ズームとしては大きめのサイズで重量的にも重い。フルサイズ用のF2.8通し標準ズームと同じレベルのかさばり具合。
単焦点が何本も詰まったようなスペックを考えて良しとするか、やはり大きすぎし重すぎると判断するか。
K-3に装着した状態でもフード逆付けなら計20cm弱の長さなので、まだ多くのカメラバッグに収納できるサイズ。
順付けだと24cm弱になってしまうので厳しいバッグが多くなると思われる。
個人的にはメインのバッグとして愛用しているインバース200AWにフード順付けで入らないのが残念。
しかしそれでも持ち出し回数がまったく減らないくらいの魅力がこのレンズにはある。
総評
満足度は110点。
ズームレンズなのに上位の単焦点並のキレで楽しい。
サイズやズームレンジなど色々と常識外れだが、描写性能も常識外れ。万人向けのスペックではないが描写力重視の人には強くオススメ。
AFのバラツキだけ少々残念なので今後のファームアップなどでの修正を期待。
とは言えそういう問題があっても使いたくなるレンズ。
あとは贅沢を言えば18mm始まりが若干物足りず。
16-32mmの二倍ズームだったら唯一無二のレンズになったかもしれない。
ともあれこのレンズはすごい。
購入に関するアドバイス
類似または関連するレンズとの比較
smc PENTAX-DA★16-50mm F2.8ED AL [IF]SDMとどちらにすべきか
一本付けっぱなしのレンズとして見るならズームレンジの広いDA★16-50の方が使い勝手がいい。
中望遠までカバーすることもそうだが、広角2mmの差も大きい。
単焦点並みの明るさ、隅々まで安定した解像力、開放を安心して使えるボケ味などが欲しければ18-35。
別途広角ズームと望遠ズームとで編成を組むようならズームレンジの狭さもカバーできる。
HD PENTAX-DA 20-40mm F2.8-4 ED Limited DC WRとどちらにすべきか
同じ広角〜標準の2倍ズームと言うことで比較する人も多いようだが、描写的にも使い勝手的にも性格の違うレンズで、単純な優劣では語れないものがある。
ズームレンジが似てる以外は特に競合するレンズではないだろう、というのが正直なところ。
それでも一応比べてみると、シグマの18-35の開放からのキレはリミズームにはないものだが、F8以上に絞ったときのシャープさはあまり差がない。
加えてリミズームのような開放の柔らかさが表現上プラスになることもあるので、どちらの描写がいいかは好みによる面も大きい。
携帯性の違いは分かりやすく大きな違い。
この18-35くらいのサイズと重さになると人によっては許容できないだろう。一方のリミズームは携帯性で問題になる点は何もない。
個人的な使い分けを言うなら、ここぞと言った本格的な風景撮影や夜景、ほかF1.8の明るさを活かした表現やキレを楽しみたい場合ではシグマの18-35、気軽なスナップや機動性を重視するシーンならリミズームといったところだろうか。
まあ18-35でスナップ撮ったり、リミズームで三脚立てての風景撮影とかもするので、絶対的な使い道の差ではなく、あくまで傾向として。
このレンズに関するメモ
フルサイズ機での利用
24mmより広角側はファインダー上でイメージサークルのフチが見える。
28mmから35mmはそれが見えなくなるので大丈夫かと思ったが、撮影してみると絞っても四隅の黒ずみが目立つ。
このレンズはあくまでAPS-C用ということで、フルサイズで使うことは考えない方がよさそうだ。
関連用品
フィルター
割とレアな72mm径。
PLフィルターがあると被写体を色鮮やかに写せる。ガラスや水面の反射除去などにも。
マルミ EXUS サーキュラーP.L 明るい高性能C-PLフィルター。
日差しの強い日中は露出過剰で開放絞りが使えないケースがあるのでNDフィルターがあるといいかもしれない。
ステップアップリング
使い回ししにくいフィルター径なのでステップアップリングをかませて77mm径を使うのもいいのではないかと。
USBドック
ピント調整やレンズのファームウェアアップデートなどが自宅で可能となる便利アイテム。
ピント調整では撮影距離および焦点距離ごとの調整などボディ側のAF微調整よりも高度な調整ができる。